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うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史
吉川 英治
「週刊文春」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页
鎌倉の名所の一ツとなった大塔ノ宮の土牢は嘘だが殺されたのは事実である。尊良、恒良、成良、義良、宗良、懐良などの諸皇子たれひとり人生を完うされたお方はない。雑兵に交じって火中を馳け歩いた皇子もある。
直木賞作家の城山三郎氏の「大義の末」を読みながらも思い出されたが、終戦直後のこと。私の疎開していた奥多摩附近の山の洞窟へ詔勅で解散した溝ノ口陸軍部隊の一部が、弾薬、食糧物資などをかくして、不穏なもくろみをもっているという噂が、あの辺の近村に真しやかに拡がった。つまり解散はしたが『おれたちはあくまで降伏せず』という彰義隊的な一部の壮烈な同志が、騎虎の勢い、なにか密盟を結んで他日を期していたものらしい。
『どうしました、その後、洞窟の志士たちは。それともあれは、単なる流言だったのでしょうか』
噂もさっぱり消えかけていた頃、私は土地の警察署長が見えたついでに訊いてみた。すると署長さんは、
『いや調べてみたら、まんざら嘘じゃなかったんですな。しかし、附近の農家などから訊いた所を綜合してみると、いやおかしいの何のッて』
と、ここでげらげら笑い出して、かねて半信半疑だった私の疑問に、こう結論をつけてくれた。