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うつくしいにほんのれきし

美しい日本の歴史

吉川 英治

「週刊文春」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页

青空文庫

兵隊と天皇

『いったい人員は、何十人だったのか知れませんが、確かに最初の結束だけはどうやら一本気の本物だったらしいんです。調べたところ、穴の中には武器やら何やら持ち込まれてありましたから。ところがですね。砂糖、油、カンパン、煙草といったような物は、もうあとかたもありませんわ。いちどは慨然と殉国を誓った結束組も、別れてみると、やはり穴ぐらの物資というやつがお互いの心配になり気懸りで仕方がない。そこでこッそり単独で穴ぐらを覗きに行ってみると、果たせるかな、もう先に来たやつが砂糖や煙草に手をつけて、はッきりと減っている。すると自分も馬鹿正直が馬鹿らしくなって持って帰る。といった按配に、毛布からガソリンまでいつかしらお互いにコソコソ持ち去ってしまったもんですな。それやあ、農家もくすねたかもしれませんがね。なにしろ極めて自然にかたづいておりますよ。ええ、赤サビの機関銃などは、進駐軍をつれていって、その後われわれの方で処分しましたがね』

兵隊と天皇

こんど東宮の御新居となる青山御所の正門寄りの鮫ヶ橋に、以前、お歌所の千葉胤明翁が住んでおられた。

千葉さんも戦時中、私とおなじ奥多摩の福生に一時疎開され、そこでついに亡くなられたが、戦前から私も赤坂表町にいたので、早朝の散歩のついでには、よく私の家の縁先へ寄っては、番茶などすすりながら