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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

かれは真面目に芳子の恋とその一生とを考えた。二人同棲して後の倦怠、疲労、冷酷を自己の経験に照らしてみた。そして一たび男子に身を任せて後の女子の境遇の憐むべきを思い遣った。自然の最奥に秘める暗黒なる力に対する厭世の情は今彼の胸を簇々として襲った。

真面目なる解決を施さなければならぬという気になった。今までの自分の行為の甚だ不自然で不真面目であるのに思いついた。時雄はその夜、備中の山中にある芳子の父母に寄する手紙を熱心に書いた。芳子の手紙をその中に巻込んで、二人の近況を詳しく記し、最後に、

父たる貴下と師たる小生と当事者たる二人と相対して、此の問題を真面目に議すべき時節到来せりと存候、貴下は父としての主張あるべく、芳子は芳子としての自由あるべく、小生また師としての意見有之候、御多忙の際には有之候えども、是非々々御出京下され度、幾重にも希望仕候。

と書いて筆を結んだ。封筒に収めて備中国新見町横山兵蔵様と書いて、傍に置いて、じっとそれを見入った。この一通が運命の手だと思った。思いきって婢を呼んで渡した。

一日二日、時雄はその手紙の備中の山中に運ばれて行くさまを想像した。