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いもがゆ

薯粥

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页

青空文庫

四

鍛錬をこれから打ち太刀の稽古でやってゆくのだ、ではもういちど拙者が見せてやる、よいか」

惣兵衛はその稽古の終るまで、ほとんど時の移るのも忘れて見まもっていた。――ただ者ではない。屋敷へ帰ってからも、かれの頭のなかはそのことでいっぱいだった。「軍兵の覚悟」という言葉も明確だし、青竹を使っての教えぶりも要を得ている。そして全体を通しての湧きあがるような情熱が、三十余人の者へびしびしとはいってゆくさまは更にみごとなものだった。――あんな事をさせて置くには惜しい、機会をみて世に出すべき人物だ。それまでの興味とは違った角度から、惣兵衛は改めて隼人に注意しはじめた。そして間もなくその機会が来たのである。……新秋八月の或る日、惣兵衛は矢作橋改修の工事場へでかけていった。橋の上下にかなり大掛りな護岸工事をする設計で、それがほぼ出来かかっている。かれはその模様を下役人の案内でずっと見て廻った。

四

秋とはいっても、日盛りはまだ暑さがひどかった。工事場はいちめんに埃立って、石を運んだり土を起したりする雇い人足や足軽たちの群が汗まみれになって右往左往していた。……するとそのなかで差担いで石を運んでいる若い足軽の一人と、見張り番の侍とのあいだに、とつぜん喧嘩が始まった。