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いもがゆ
薯粥
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,018 字 · 24 页
隼人はさっと身をひき、図書介の木剣を戞と叩き落したが、それと同時に自分の木剣もぽろっととり落した、「まいった」「まいった」二人はほとんど同時に叫んだが、それでも隼人が相打に譲ったのだということは隠しようがなかった。
「勝負みえた、両人ともみごとだ」忠善がみずからそう声をかけた。
「十時隼人とやら、ゆるす、近うすすめ」「上意であるぞ」惣兵衛も促すので、隼人は支度を直して前へ進んだ。忠善は、じっとその顔を瞶めながら、「そのほうのことは、かねて惣兵衛より聴いておる、唯今の試合ぶりもあっぱれだった、食禄五百石で師範に召出したいと思うがどうか」「有難き御意を賜り、おん礼を申上げまするが、御当家にはすでに師範として梶井どのもおいでになることなのであり、憚りながらかたく御辞退を申上げます」
「ああいや、十時氏しばらく」うしろから図書介が声をかけた、「唯今の勝負はまさしく拙者の敗北でござる、御前においてかく明らかに優劣がきまったからは、もはや師範の役は勤まり申さぬ、拙者は退身つかまつるゆえ、どうぞ御斟酌なくお受け下さるよう」
「……ほう」隼人は眼をみはり、びっくりしたようにふり返った、「唯今の勝負に負けたから、もはや師範は勤まらぬと仰しゃるか、……すると、仮に拙者が師範となっても、また別に兵法家がまいって試合をし、負ければ師範