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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

」と、奥野も首をかしげた。「もう大抵は判っているようなものですが、何分にも確かな証拠が挙がっていませんから、下手なことをしてしまうと、あとの調べが面倒でしょう。」

こっちに確かな証拠を掴んでいないと、相手が強情者である場合には、その詮議がなかなか面倒であることを秋山もよく知っていた。

「そこで、あとのことは藤次郎にあずけて来ましたが、どうでしょう。」と、奥野は秋山の顔色をうかがいながら言った。

「それでよかろう。」

手先の藤次郎は初めからこの事件に係り合っている上に、平生から相当の腕利きとして役人たちの信用もあるので、秋山も彼にあずけて置けば大丈夫であろうと思った。そこで今後の処置は藤次郎の探索の結果を待つことにして、奥野はひとまず別れて帰った。

ゆうべの雨は暁け方からやんだが、きょうも一日曇り通して薄ら寒い湿っぽい夜であった。奥野が帰ったあとで、秋山は又もや机にむかって、あしたの吟味の調べ物をしていると、屋根の上を五位鷺が鳴いて通った。

かれは自分がいま調べている仕事よりも、伊兵衛殺しの一件の方が気になってならなかった。事件そのものが重大であるというよりも、幽霊の仮装を使って自分をだまそうとした彼らの所業が忌々しくてならないのである。