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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

一方には会津屋のむすめが家出をする、一方には叔父に係り合いのあるらしい女が雷に撃たれている。この二つの事件がまるで別々であるのか、それともその間に何かの縁をひいているのか、それも一切わからないので、叔母も母もなんだか夢のような心持で、ただ溜息をついているばかりでしたが、一方の女のことはともかくも、娘の家出――多分そうだろうと思われるのですが、この方はそのままにして置くことは出来ませんから、店の者にも言い付けて、それぞれに手分けをして心あたりを探させることにしたというのでございます。

半日ぐらい帰らないからといって、こんなに騒ぐのもおかしいと思召すかも知れませんが、その頃の堅気の家のむすめは誰にも断りなしに遠いところへ行くことはありません。たとい近所へ行くにしても必ず断って出る筈ですから、小半日もその行くえが知れないとなれば、ひと騒ぎでございます。ましてことし十八という年頃の娘ですから尚更のことで、誰かと駈落ちでもしたか、誰かにかどわかされたか、なにしろ唯事ではあるまいと思うのが普通の人情でございます。叔母が心配するのも無理はありません。

いつまで叔母と向い合って、溜息をついていても果てしがないので、母はまた来るからといって一旦帰って来たのでございます。