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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
そのあばらの骨の砕けているのはそれがためであった。
相手の死んだのを見すまして、鉄作はその石を少しく離れたところへ運んで行った。証拠を隠してしまって、あくまでも海馬の仕業と思わせるたくみである。そうして、自分はそのままそっと立去るつもりであったが、彼はあたかもその時にほんとうの海馬に出逢った。これに胆を消して、うろたえ廻って逃げ出す途中、あやまってかの陥し穽に転げ落ちたのである。こうなってはもう仕方がないので、彼は救いに来てくれた人びとに向って、嘘と誠を取りまぜて話した。お福と一緒にここまで来た事と、海馬に出逢った事と、この二つが本当であるので、正直な村の人びとはお福が海馬に踏み殺されたことまでも容易に信じてしまったのである。ほんとうの海馬があたかもそこへ現れて来たのは、彼にとっては実に勿怪の幸いともいうべきであった。
こうして世間の眼を晦まして、彼は老いたる情婦を首尾よく闇から闇へ葬った後、さらに若い情婦を手に入れようと試みた。おらちも従弟同士の若い男を憎いとは思わなかったが、養い親と彼との関係を薄うす覚っていたので、素直にそれに靡こうともしなかった。