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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
幸いにその下は空地であったが、もしも住宅に接近していたらば、わたしの家は潰されたに相違なかった。
早速に出入りの職人を呼んで、くずれ落ちた土を片付けさせると、土の下から一人の男の死体があらわれた。男は崖くずれに押し潰されて生き埋めとなったのである。かれは手に鍬を持っていた。警察に訴えてその取調べをうけると、生き埋めになった男は、女房殺しの森川権七とわかった。
権七はかの事件以来、どこかに踪跡を晦ましていたのであるが、どうしてここへ来てこんな最期を遂げたのか、だれにも想像がつかなかった。
「やっぱりわたしの想像があたっていたらしい。」と、父は母にささやいた。
空地の草原へ穴を掘りに来た者は、おそらく権七とおいねであったろう。父が想像した通り、かれらは何かの埋蔵物を掘出すために、幾たびか忍んで来たらしい。権七は女房を殺して、どこにか姿を隠していながらも、やはりかの埋めたるものに未練があって、風雨の夜を幸いに又もや忍び込んで来て、今度は崖の下を掘っていたらしいことは、かれの手にしていた鍬によって知られる。しかも風雨はかれに幸いせずして、かえって崖の土をかれの上に押し落したのであった。