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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

「そう仰しゃられると、わたくしもまことに困ります。実はあの……。こちらの友之助さんは、家のお蝶さんと……。」

「え。友之助がお蝶さんと……。ほんとうですか。」と、お銀はおどろいて訊きかえした。

「どうかこれは御内分にねがいます。」

「まあ、それはちっとも存じませんでした。一体いつごろからでしょう。」

「わたくしもよくは存じませんけれども……。」と、お筆は考えていた。「なんでもこの八月か九月頃からのように思われます」

「そうですか。」と、お銀は溜息をついた。

わたくしの口からこれを聞いたことはくれぐれも内証にしてくれと、お筆が念を押して帰ったあとで、お銀は再び溜息をついた。お蝶もみにくい容貌ではないが、お筆にくらべると確かに劣る。勿論、今更そんな優劣を論じている場合ではない。出来たものなら仕方がないとしても、ここに第一の難儀は、お蝶がひとり娘であるということである。友之助も矢田家の相続人である以上、婿にも行かれず、嫁にも貰えず、この処置をどうしたら好いかと、お銀も思案にあぐんだのであった。

その晩、友之助の帰るのを待ちかねて、お銀は早々にその詮議をすると、友之助もお蝶と関係のあることを白状した。