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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

しかじかの口上。起きられぬほどの容体でなければちょっと逢いたい、と昨夜の今朝で、その間淵の妹が追掛けてやって来ました。

不精から、面倒くさいというばかり、逢って差支えはちっともないのです、それに白山。――麻布からは大抵の苦労じゃない、勿論断る法はありません。玄関さきの座敷へ通させ、仕事場の小刀をおいて出て逢いました。

(ああ、ああ、さてお久しいことやぞや、お懐しい。)

申しては驕りの沙汰だが、「ことやぞや」ではお懐しいがられたくない、ところへ、六十近いお婆さんだから、懐しさぶりを露骨に、火鉢を押して乗出した膝が、襞捩れの黒袴。紬だか、何だか、地紋のある焦茶の被布を着て、その胡麻塩です。眉毛のもじゃもじゃも是非に及ばぬとして、鼻の下に薄髭が生えて、四五本スクと刎ねたのが、見透される。――この性格、何とお思いなさいます。」

(――と話した時、小山直槙は眉を顰めたのであった――)

「……余儀ない次第と申そうか、了見違いと申そうか、やがて、真夜中にこの婆さんを見なければならない羽目に立到りました時は、この面相にして、白を着て、黒い被布です、朱い袴を穿いていたのだから、その不気味さをお察し下さい。