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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
六
なかなか、絵も二枚や三枚じゃない、ずッしり分厚に綴込んだ一冊で、どんな事が書いてあるか知れません。冒険的にも見たかったのでありますが、牛若ほどの器量がないから、魔道妖異の三略には、それきり、手を触れる事が出来なかった。
六
「なあ、それにしても、ほんにほんに久しいものやて、にい……」
さて、袴を穿いた婆さんはいうのです。巻莨を吹かしますが、取出すのが、持頃の呉絽らしい信玄袋で、どうも色合といい、こいつが黒い瓶に見えてならなかった。……
「あの時分」……
自分で尼、尼という、襟に大形の輪数珠も掛けていましたが、容体が巫女にも似て、両部も三部も合体らしい。……「尼ども、両親はとうになくなって、もともと身上の足りぬ処を、洞斎兄の学資といえば、姉の嫁、私には嫂じゃにい、その里方から末を見込んで貢いでおった処を、あの始末で、里をはじめ、親類もあいそを尽かせば、嫂も断念めた。それやで、に、嫂の里へ引取って養うてくれておった尼を連れて、東京へ、徒士町の長屋へ出向いたというものは、嫂は縁切り、尼はまたこの広い世界へ棄てられた。島流し同様のものやったが、にい――
人間の侘しい住居というより、何やら、むさくるしい巣のような裡から、あんたは、小僧に――」