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かみなりもんいほく

雷門以北

久保田 万太郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页

青空文庫

といろ/\そういったうえ『かくの如きはたゞ見易き一例にすぎずして、家屋住宅の好みより衣服器具の選択など、形式上のすべてがいわゆる江戸趣味と背馳するもの挙げて数ふべからず。』とはっきり結論を下している。そうしてさらに『およそ斯くの如きは、山の手に至りて特に甚だしく、下町もまた漸く浸蝕せられ、たゞ浅草区のみは、比較的にかゝる田舎漢に征服せらるゝことの少きをみる。』とこと/″\く肩をそびやかしている。――いうところはいかにも「明治四十三年」ごろの大ざっぱな感じが、その政治家だの学者だの官吏だのの浅草の土地に従来あんまりいなかったというだけはほんとうである。すくなくも、その当時、わたしのその学校友だちのうちは……その親たちはみんな商工業者ばかりだった。それも酒屋だの、油屋だの、質屋だの、薬屋だの、写真屋(これは手近に「公園」をもっているからで、外土地にはざらにそうない商売だろう)だの、でなければ大工だの、仕事師だの、飾り屋だの……たま/\勤め人があるとみれば、それは小学校の先生、区役所の吏員、吉原の貸座敷の書記さん……そうしたたぐいだった。女のほうには料理屋、芸妓屋が多かった。