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かみなりもんいほく

雷門以北

久保田 万太郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页

青空文庫

仲見世(二)

商人のうちに生れたわたしたちにとって門のある住居ほど心をそそるものはなかった。

……「浅倉屋の露地」を出抜けたわたしはそのまま泥溝にそって公園の外廓を真っすぐにあるいた。いまのパウリスタの角を右に切れて――その左つ角に大鹿という玉ころがしがあった――いうところのいまの「でんぼいん横町」を「仲見世」へ出たのである。

仲見世(二)

……と、簡単にそういってしまえばそれだけである。が、片側「伝法院」の塀つづき、それに向いてならんだ店々だから、下駄屋、小間物屋、糸屋、あるへいを主とした菓子屋、みんな木影を帯び、時雨をふくんで、しずかにそれ/″\額をふせていた。額をふせて無言だった。――それには道の中ほどに、大きな榎あってたくましい枝を張り、暗くしっとりと日のいろを……空のいろをせいていた。――その下に古く易者が住んでいた。――いまの天ぷら屋「大黒屋」は出来たはじめは蕎麦屋だった。

したがってそこへ出る露店もしずかにつつましい感じのものばかりだった。いろは字引だの三世相だのを並べた古本屋だの、煙草入の金具だの緒締だのをうる道具屋だの、いろ/\の定紋のうちぬきをぶら下げた型紙屋だの。