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かみなりもんいほく
雷門以北
久保田 万太郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页
浅草学校(二)
恥辱をあとにもさきにもうけたことがなかったのである。そんなへまをしたことは一度もなかったのである。――たとえば夢ごこちで、茫然とただわれとわが足もとをみてわたしは立っていた。――やがて悲しさが身うちにはっきりひろがった――ボロ/\ととめどなく涙がこぼれて来た。
が、それをみてわたしのために起ってくれたのが「つるよし」のおばアさんである。「つるよし」のおばアさんというのは、わたしと同じ級に女の子をよこしていた吉原のある貸座敷の隠居で、始終その子に附いて来てはとも/″\一日学校にいた。外の附添いたちと小使部屋の一隅を占めて宛然「女王」の如くにふるまっていた。小使なんぞあごでみんなつかっていた。――その「つるよし」のおばアさん、「あの子はそんな子じゃアない、立たせられるようなそんな悪い子じゃアない――そんな間違ったことってあるもんじゃアない」とわがことのようにいきり立ち、わたしをそういうことにしたその先生のところへその不法を忽ちねじ込んだものである……
浅草学校(二)
その先生、高等四年(というのは最上級のいいである)うけもちの、頬ひげの濃い、眼の鋭い決してそのあお白い顔をわらってみせたことのない先生だった。