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かみなりもんいほく

雷門以北

久保田 万太郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页

青空文庫

浅草学校(一)

――これこそ「仲見世」でのむかしながらのなつかしい景色である……

―――――――――――――――

……金竜山浅草餅の、震災後、いさましい進出をみせたのが、商売にならないかしてたちまちまたもとへ引っ込んでしまったのをまえに書きはぐった。――おそらくは後代、その名のみ残ってどんなものかと惜しまれるのがこの古い名物の運命だろう。

浅草学校(一)

……学校の、門のほうを向いた教場の窓から、五重の塔の青い屋根のみえることをいったわたしは、それと一しょに、そこを離れた北のほうの窓から、遠くまた、隅田川の水にちかい空を、しら/″\とのぞむことの出来たのをいわなければいけない。――花川戸、山の宿、金竜山下瓦町(広小路の「北東仲町」をいま「北仲町」といっているように、そこもいまは「金竜山瓦町」とのみ手間をかけないでいっている)隅田川に沿ったそうした古い町々が、そこに、二、三町乃至五、六町のところに静かに横たわっている。――「馬道」とそれらの町々との間をつらぬく広い往還に、南千住行の、「山の宿」だの「吉野橋」だのという停留場をもつ電車のいまのようにまだ出来なかったまえは、同じ方角へ行くガタ馬車が、日に幾度となくわびしい砂けむりをそのみちに立てていた。