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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
――おまえは饒舌り過ぎるぞ。
「その小言はもうきかないな、十太夫はこの世の人間じゃないんだから」
――土田は饒舌り過ぎる。
「おれがみまいにゆかなかったのは、危篤の病床にいる十太夫に、あの人とおれの並んだ姿を見せたくないと思ったためだ」と土田は云った、「――そしてまたあの人にも、おれと十太夫の二人がいっしょにいるところを見せたくなかった、いまになればつまらないことのようだ、子供っぽい心配のようだが、あの当時のおれたちのあいだでは大切なことだった、十太夫にもしづさんにもおれにも、――そうだろう、その証拠はいま、あの人の顔にあらわれていた、おまえもあの表情は見ただろう、おれが師範のあと継ぎの話をしたときの、あのがっかりしたような顔つきをさ」
――もうそのくらいでよせ。
「そうしよう」と云って土田はまた微笑した、「だが断わっておく、安川を師範に据えようと思ったのも事実なんだぜ、いいよ、おれは饒舌り過ぎた、これでやめるよ」
土田正三郎はゆったりとした大股で、御蔵の辻のほうへ曲っていった。