轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页
お綱は、お千絵の手をとって、第二の逃げ口を探し廻った。だが――もとより、そこ以外に、別な出口のある筈はない。
と。奥のほうから、ムーッと温い火ッ気が流れてきて、うろたえ廻る裾や袂に、渦になった黒煙が真綿のようにまつわりだす。
「アア、大変なことになった――」おたみは狂わしく駈け戻って、はやまって放けた奥の火を消そうとした。けれど、密見の間の反古と油は、もう消し伏せもならぬ焔となっている。
まっ黒な煙の中に、ピラピラ、ピラピラ……と、青い火、赤い火の舌尖が、うす気味悪く舐めずりだした。
「お嬢様! お綱さん! 早くどこからか逃げて下さい。火が! 火が! 火が……」
必死の力で、おたみは、二、三枚の畳をはねあげ、前の板境へ立てかけて、お綱の切り破った穴を密閉した。そしてそれを、自分の背中で支えながら、
「お綱さん! 早くしごきを繋ぎ合せて、今の数珠梯子へ、結び足して……早く、早く、お嬢様を助けてあげて下さいよウ!」
後の声は煙に咽んでしまった。こうして、おたみが自分の背なかの焦げるまで、畳で穴を塞いでいるうちは、しばらく、流れでる煙も防げ、また火の廻りも幾分かは遅くなろう……。