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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页
和蘭陀カルタ
「畜生!」万吉の眼は炯々となり、五体はブルブルッとふるえてきた。右手に何かを固くつかんで身を屈ませて行くが早いか、
「御用ッ!」とばかり一足跳び。
腕の限りヒュッと投げた方円流二丈の捕縄は、闇をあやまたず十夜頭巾の人影へクルクルと巻きついた。――しかし対手は驚かない、絡んだ縄を左に巻きつけ、静かに、
「生意気な手先め、サ、構ってやるから寄ってこい」右手の大刀を片手にふりかぶった。
「ムッ!」と万吉、毛穴の膏を絞ったが、まるで腕が違っている、こっちで投げた捕縄は向うの武器、見る間にズルズルと魔刀の下へ引き寄せられる。
和蘭陀カルタ
辻斬り商売のお十夜孫兵衛、本名は関屋孫兵衛である。もと阿波の国川島の原士、丹石流の据物斬りに非凡な技をもち、風采もなかなか立派だが惜しむらく、女慾にかけても異常という性質がある。
阿波の原士というのは、他領の郷士とも違い、蜂須賀家の祖、小六家政が入国の当時、諸方から、昔なじみの浪人が仕官を求めてウヨウヨと集まり、その際限なき浪人の処置に窮して、未開の山地を割りあてた。これが半農半武士に住みついて、蜂須賀名物の原士となり、軍陣の時は鉄砲二次の槍備えにあてられ、平時の格式は郷高取、無論、謁見をも宥されて、慓悍なこと、武芸者の多く出ることはその特色。