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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「偉えなあ、おめえたちは」

「おじさん」

「なんだい」

「どうして偉いの? あたいたちが」

「それを知らないところがなお偉い。よく働くなあ、小さいのに。人間、なんでも、働かなくちゃいけねえや。それを偉いといったのさ」

と万吉、鮟鱇鍋から、葱を挟んでフウと吹いて口へ入れた。

いつぞや、墨屋敷の窓の下で、お綱と約束したことがあるので、彼は、例の鉄砲笊を肩にかけて、その日妻恋坂のお綱の家を、ソッと覗いてきたのである。

まだ帰っていない様子なので、そのままブラブラ戻りながら、駿河台へ行ってみようか、明日を待って、もいちど妻恋へ出なおすとしようか、と迷った末に、この縄暖簾へとびこんで、とにかく、寒さしのぎに一合取った。

飲めそうでいて、あまり飲めない目明しの万吉。

徳利一本で、たくさんになったので、飯を貰おうと思っていると、可愛いお獅子の姉弟が、人なつこく寄ってきたので、思わず、もう一本取ってしまった。

「いい子だなあ」

万吉は、冷ッこい手を、暖めてやる気で、二人の手を一ツずつ握ってやりながら、

「なんていう名だい」と訊くと、

「あたい?」と弟のほう。

「乙吉っていうの。