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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页
が、その後が悪かった。余り二人の手腕が切れ過ぎて禍いとなった。
「これは根が深いぞ――」と初め鴻山は考えたのである。
「倒幕の大事などが、長袖の神学者や、公卿ばかりで謀れるものではない。黒幕がある! 傀儡師がある! たしかにある!」と固く信じた。
「あるとすれば――どこの大名であろう? 無論西国、一体西国大名は、機さえあれば風雲に動きやすい。島津か、毛利か。いやことによるともっと意外な……」鴻山の苦心へ、俵同心や万吉も、骨身を惜しまずいろいろな機密を探って耳に入れた。
阿波二十五万石の蜂須賀重喜、まだ若くはあるが英邁な気質、うちに勤王の思想を包み、家士の研学隆武にも怠りがない、――前には式部を密かに招いて説を聞き、領土の浜では軍船を仕立てて陣練の稽古をしたともいう噂である。
「ウーム、黒幕は海の向うだ」鴻山は意を得たりとした。「阿波は由来謎の国だ。金があって武力が精鋭、そして、秘密を包むに都合のいい国、一朝淡路を足がかりとして大阪を図り、京へ根を張る時は、西国大名と呼応して屈強な立場――捨ておいては一大事である」
すぐ意見を書いて城代酒井侯へ差しだした。