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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

それのみか。

聞けば天堂一角も、阿波守の内命を受けて、どこまでも弦之丞の命を絶たんために、この江戸表までつけてきたのだというから、かれはいよいよ驚きもし、また乗気にもなった。

これはまったく、何かの巡りあわせみたいなものである。――旅川周馬、天堂一角、そして、おれ自身――期せずして弦之丞を殺害せんとする者が、ここで三人数えられる。いよいよ事成就の前兆だ。

これは一つ、天堂一角に出世の蔓をつかませる態にケシかけて、喜撰風呂へ連れこんでやろう――こうお十夜は考えた。

そこで周馬にひきあわせる。

ざッくばらんに話しあう。

話は早いだろう――目的は一つだ。

弦之丞を、暗殺か、惨殺か、どっちみち片づけてしまうことが、三人ともに一致しているから、すこぶる都合がいい。

ばらした上の報酬は。

おれはお綱を自由にする。周馬はお千絵を探して勝手にするだろう。そして一角は、国元へ帰ってこの由を阿波守へ報告する。莫大な恩賞と加増と面目をほどこすのは分りきったこと、これもずいぶん悪くない。

「うむ、一角」

「なんだ」

「その話なら安心しろ」

天堂一角は、まだ自分の目的を洩らしただけで、孫兵衛のほうの話はきいていないので、何を安心していいのか分らなかった。