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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

で、やんわりと棘をたてずに、お十夜の諸手を抜けて、法月弦之丞。

「おお、旅川周馬――天堂一角――お十夜孫兵衛殿――いずれも珍しいお揃いで」

と、いとニコやかに会釈をした。

すると、そこを離れた三橋の角では、やっと、お綱のはやり立つのを抱きとめていた万吉が、

「おや、ありゃあ弦之丞様じゃねえか」

地獄で仏のよろこばしさをそのままに、ここで幾月かの間、張りつめていた神経がいっぺんにゆるんで、膝ッ骨の蝶番いがクタクタになるかと思われると、お綱も遠見に気がついて、

「ああ、法月さんが――」と、思わず背を伸ばして、もう懐かしさをからませる。

だがしかし、それが弦之丞であると知ると、江戸の大道で、かくも明白に出会した仇と仇が、どうなりゆくのか、それも心配。

面と面とを向いあわせた途端に、ハッと思ったが、弦之丞の挨拶、意外にいんぎんであったので、かえって薄気味悪く思ったお十夜と一角とは、ひそかに鯉口を整えて、顔の筋を怖ろしげにこわばらせてしまった。

そこへゆくと、旅川周馬、腕に器量はないが人を食ってもいるし、鼻ッ先の機智もあるので、ギョッとした気振も見せずに、

「よう、法月氏か! 意外な所でお目にかかった。