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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页
「へい……」阿波と聞くと、万吉も、すなおに首を垂れてしまった。
「前途の多難は今宵ばかりでない。どこまでも大事を取って進まねばならぬ。騎虎の勇にはやって、二つとない身を傷つけたら何といたす」
「さ、それだから俺もまた、いっそうあなたのお体を、お案じ申すのでございます」
「ウム、その心は過分である。いずれ周馬の手紙には、深い魂胆があり、企らみがあるものとは拙者も察しているが、この弦之丞の眼からみれば、およそは多寡の知れたあの三人……あはははは、久しく試みぬ夕雲流、場合によっては――」
と、無銘の一腰、笛袋に入れて腰に落した。
「そりゃ、弦之丞様には、腕に覚えもございましょうが、足場の悪い根岸の闇、欺し討ちや、飛び道具という策もございますから、必ず、ご油断をなさいますな」
「そこまで物を案じては、いわゆる取越し苦労というもの。大望をもつ身でなくとも、こんな例は、道場通いの修業中にもママあることじゃ。申せば武士の日常茶飯事……」
スタスタと板縁から土間へ出て、塗下駄を突っかけ、行乞の深笠をとって頭につけた。そして、みずから戸を開け、みずから後を閉めて、万吉が何と口をさし挟むいとまもなく、