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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

でも、なんて素敵なお化けでしょう。黄金仮面! 其の名を聞いた丈けでも、胸がワクワクする様だわ」

アア、何という事だ。大鳥家の一人娘不二子さんは、とうとう気が違ってしまったのであろうか。乳母のお豊ならずとも、誰がこれを正気の沙汰と思うものか。

「わたし、喉が乾いてしまった。婆や、お紅茶を入れて来ておくれ」

暫くすると、不二子さんは、人の気も知らないで、呑気な注文をした。

「そうして、わたしを追い出そうとなさるのでしょう。駄目です駄目です。この部屋から一足だって出るこっちゃございません。お紅茶なら、女中を呼んで云いつけますわ」

乳母も仲々抜りはない。柱の呼鈴を押すと、やがて、廊下に足音がして、ドアの外から女中の声がした。

「お紅茶を二つってお云い。お前だって喉が乾いたでしょう」

「エエエ、お相伴いたしますとも」

お豊は半ばやけな調子で、不二子さんの云うがままに、ドアの外の女中へ伝えた。

暫くすると、書生の青山の鍵でドアが開かれ、女中が紅茶のお盆をテーブルの上に置いて立去った。ドアに再び鍵がかけられたことは云うまでもない。

「婆や、暗いわね」

不二子さんが、お豊に目で合図をした。