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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
黄金仮面の恋
彼にはあのとき薄々それが分っていたのだ。
「君はずるいぜ。分っていたらなぜ教えてくれなかったのだ」
あとになって、警部が愚痴をこぼした時、明智は、
「だって、別に確信があった訳じゃないからね。若し贋物でなかった場合は大変だ。ただ僕は、あいつの後姿が、何となく気に喰わなかった丈けさ。それに、捕縛するのには、僕なんか大して手助けにもならないしね」
と笑った。
無論即刻、賊の逃去った方角の各警察署へ打電して、逮捕方を依頼したけれど、どこをどう逃げたのか、いつまでたっても、何の報告もなかった。
黄金仮面の恋
C湖の大捕物は、かくして何等得る所なく終った。侯爵令嬢美子姫の下手人は分った。だが、その下手人小雪さえも、あの怪賊の為に果敢ない最期をとげてしまった。
二美人の惨死。国宝にも比すべき古美術品の盗難。だが怪物黄金仮面の正体は勿論、その配下の行衛さえ、名探偵明智小五郎の手腕を以てしても、遂につきとめることが出来なかった。
新聞紙が、この絶好の社会種を、鳴物入りで書き立てたのは云うまでもない。随って、東京は勿論、日本全国の老若男女が、嘗つて聞いたこともない怪賊の噂に震え上った。