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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

恐ろしき喜劇

その外は会場の大道路だ。今日は貴賓御警衛の為に、大道路には数名の巡査の姿が見える。

「オーイ、今その柵を越した奴はないか」

一人の警官が怒鳴ると、左右の大道路に立番をしていた巡査が一斉にこちらを向いて、口々にそんな奴は見なかったと答えた。

人々はお互に顔を見合せて立ちすくんでしまった。逃道はないのに、賊の姿が消えたのだ。

「オイ、この正面の建物は何だ」

重だった一人が尋ねると、看守監督の男が答えた。

「演芸館の裏口です。ここから向うが余興場になっているのです」

「開演中かね」

「エエ、ホラ囃しの音が聞えるでしょう」

「まさか、奴、開演中の群集の真唯中へ飛び込んだのじゃあるまいね。いくら何でも、そんな無茶はしまいね」

「だが、左右の道路へ逃げなかったとすれば、いくら無茶でも、奴はここへ飛込んだと考える外はない。蒸発してしまったんでなけりゃね」

「兎も角検べて見よう」

一同は演芸館の裏口から、ドヤドヤと這入って行った。

恐ろしき喜劇

お話変って、その時演芸場の舞台では、喜劇「黄金仮面」の第一幕目が終った所であった。何も知らぬ数千の見物達は、舞台上の偽の怪人「黄金仮面」