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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

金色の戦

やがて、大鳥氏は憮然として云った。「不二子は悪魔に魅入られたのです。併し、いかに堕落しようとも、たった一人の私の娘です。このままにして置いては、死んだ妻に対しても申訳がありません。未練な様でも、娘の行衛を探して取戻さねばなりません。明智さん、あなたのお力をたのむ外はないのです」

「承知しました。仮令御依頼がなくとも、黄金仮面は僕の仇敵です。きっとお嬢さんは取戻してお目にかけます。いや、お嬢さんを取戻す丈けではありません。黄金仮面そのものを引捕えるのもそんなに遠いことではない積りです」

明智の絶えぬ微笑が、一刹那影をひそめ、目の底に異様な光が燃えた。仇敵黄金仮面に対する深讎綿々たる闘志を、まざまざと語るものである。

金色の戦

その夜更け、戸山ヶ原の例の怪屋の地下室に、いとも奇怪なる、金色の媾曳が行われた。

地下室とは云いながら、そこは、どんな貴族の客間よりも立派に飾りつけられた、居心地のよい部屋である。

桃色の壁紙、深紅のたれ幕、若草の様に柔かい絨毯、深々と身を包む長椅子のクッション、四方の壁を飾る夢の様な油絵の懸額、艶かしき香の匂、魂もとろける飲物の数々。