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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

闇の中の巨人

波越氏が乱暴な言葉で怒鳴った。

トランクの中には、赤ん坊程もある大きなキューピー人形が手を拡げて、両方の目玉を真中に寄せて、人を小馬鹿にして笑っていた。トランク三つとも、同じ人形だ。そして外には何一品入っていないのだ。警察を揶揄する為に態々企らんだお茶番としか考えられない。

白粉の化物みたいな大男、屋上庭園の仔細らしい旗信号、日比谷公園の追っ駈けっこ、そしてトランクの中には国宝どころか、畜生め、このキューピー人形だ。こんな甘手に乗ったかと思うと、波越警部は地だんだ踏んでも足らなかった。

スゴスゴホテルを引上げて、警視庁に帰って、それから退庁時間が来て、自宅に戻り、床につくまで、警部は殆ど口を利かなかった。警察官拝命以来、嘗てこれ程憂鬱を感じたことはなかった。

闇の中の巨人

波越氏は翌日登庁すると早速明智に電話をかけた。昨日の恨みを云うつもりであった。ところが明智は昨夜から帰らないとの返事だ。それから夕方までに、五六度も電話をかけて見たが、いつも留守だ。

何とも云えぬ焦燥の内に、又一日がたって、その翌日の夕方、やっと明智のありかが分った。しかも今度は彼の方から、警視庁へ長距離電話をかけて来たのだ。