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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

さて愈々当日が来た。

麹町区Y町のF国大使館附近には、午後になると早くも、十数名の制服巡査が、配置された。F国実業家代表の一行は、この国にとって、非常に大切な賓客であったから、「黄金仮面」の一条がなくとも、この程度の警戒は当然なのだ。

定刻に近づくに従って、大使館の構内には、続々と自動車が乗り入れられ、大使館表玄関の石段を上る靴の音が、しげくなった。

その石段の上には接待係になりすました燕尾服の波越警部が、私服の二名の部下と共に頑ばっていた。

大使の二名の秘書官(その一人は通訳を兼ねた邦人秘書官であった)が、波越警部と肩を並べて来客の首実検を勤めた。

来客はF国人が最も多く、邦人それにつぎ、他の諸外国の人々も混っていた。それが多くは夫人同伴で、夫々の国語を囁き交しながら入って来る有様は、さながら人種展覧会の感じであった。

知名の人々ばかりであったから、大抵は一目でそれと分ったが、中には秘書官も、波越警部も顔を見知らぬ客があった。そういう人には、鄭重に招待状を要求し、姓名を尋ね、それが日本人である場合は、波越氏と二人の部下が、三方から、ジロジロと鋭い疑惑の視線をあびせかけるという、水も漏らさぬ警戒ぶりだ。