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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
薄々事の次第を悟った警視総監が、大きな目をパチクリやって尋ねた。
「そうです。恐らくこの釦を押せば、我々はここにじっとしていて、元の階下へ戻ることが出来ましょう」
明智は云いながら、思い切って、床の釦を押した。
と、何かしら異様な事が起り始めた。人々は身体がしびれた様になって、軽い眩暈を感じた。
だが、その原因が何であるのか、暫くはまるで分らなかった。
部屋は少しも動揺しなかった。天井も壁も床も全く静止していた。だが、人々は、その静中に一種名状し難き「動き」を感じた。
「ごらんなさい。我々は今、極く静かに下降しつつあるのです」
明智の指さす所を見ると、人々は愕然として目を見はった。
今打破ったドアの空隙が、時計の針程の、目に見えぬ速度で、ジリジリと上に昇って行くのだ。
部屋の四方は、窓とドアの部分丈けを残して、すっかり黒天鵞絨の垂れ幕で覆われている。そのドアの部分の長方形の隙間から、ドアそのものが、上へ上へと昇って行って、間もなく見えぬ様になってしまった。
ドアが消えたあとには、薄黒い漆喰壁が暫く続いたが、それが尽きると、下の方から再びドアが見えて来た。