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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

余り上等でない赤皮の長靴だ。

警部は一目それを見ると、ギョッとして立ちすくんだ。確かに見覚えがある。運転手に変装した明智がはいていた長靴に相違ない。

明智が警部を逃がす為に態と賊の虜となったことは明らかだ。賊が虜を大仏の胎内に運んだことも容易に想像される。とすると、明智は今の大爆発に、万に一つも命を全うすることは出来なかった筈である。

イヤ、何よりもこの長靴が証拠ではないか。彼のはいていた長靴が、爆発の為に吹き飛ばされているからには、当の明智の身体は恐らく粉微塵になってしまったことであろう。

波越氏にとって、ルパンの逮捕などより、明智の死の方が、どんなに重大問題であったか知れない。彼は何とも云えぬ激情の為に、ブルブルと震えながら、物を云う力もなく、いつまでもそこに立ちつくしていた。

×      ×      ×

三台の自動車が夜の京浜国道を、風の様に疾駆していた。先の二台はヘッドライトその他のあらゆる燈火を消して、黒い魔物の様に見えた。あとの一台は明らかに警察自動車だ。

波越警部が賊の逃亡を知って、行手に当る警察署へ、電話で急を報じたものに相違ない。