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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

警部の顔に、サッと上る驚愕の色。

「嘘だ。嘘だ。……」

彼は駄々子の様に唸った。

「波越君、君はとうとう僕の邪魔をしてしまった。そんなに疑うならこれを見給え」

木場は、頭に手をやったかと思うと、いきなり長髪をかなぐり捨て、次には、顔中の髭をむしり取った。その下から現われたのは、

「アア、明智君。まさか君の変装とは知らなかった」

波越警部の叫び声。驚くべし、天理教の布教師と見えたのは素人探偵明智小五郎であったのだ。

一座の人々は、この劇的情景に少なからぬ興味を覚えた。新聞を読むほどの人で、名探偵明智小五郎を知らぬ者はない。鷲尾侯とても、その例には漏れぬ。波越警部は、今し方の失策を忘れたかの如く、やや誇らしげに、この名高い友人を紹介した。

「だが明智さん。肝腎の時に睡らされてしまったのは、少々手抜かりでしたね」

地方の署長が、ある反感を含めて、皮肉に云った。

「エエ、併し、恐らくシャーロック・ホームズだって、僕と同じ失策をやったでしょう。なぜと云って、昨夜、殆どあり得ないことが起ったのです。僕の想像が間違っていなければ、歴史上に未だ嘗つて前例のない椿事が起ったのです。