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つばくろ

つばくろ

山本 周五郎

「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页

青空文庫

「玄関ぐらいならね、さあ抱っこして、おおこれは重くなった、大さんまた重くなったぞ」

「だいたん重たい、はは、重たいねえ」

勝江が背中を薄夜着でくるんだ。

「重たい、重たい、きいきがよくなったから重たい重たい、さあいって燕にお早うをしよう、燕もねえ、大さんお早うって云うよ、お早うって」

「燕はもういませんですよ」うしろから勝江がそう云った、「――二三日まえからいなくなりましたの、もう南へ帰ったのでございますわ」

高雄ははっとした、燕は去ったという、うわ言にまで云っていた大助の燕が。

「どうったの、たあたま、ちばめどうったの」

「――うん、燕はね」

当惑しながら、高雄は脇玄関へ出ていった。差懸けの梁に巣はあるが、そこはひっそりとして、見ただけでも棲む主のいなくなったことがわかる。大助はべそをかいて、燕がいないと泣き声をあげ、父親の腕の中で身もだえをした。

「燕はねえ大助、よくお聞き、燕は寒くなると暖かいお国へ帰るんだよ、あっちの遠いお国へね」高雄は子の頬へ頬を寄せながら云った。

「――そして春になって、こっちが暖たかくなると、また大さんのお家へ帰って来る、大さんが四つになると、燕はちゃんと帰って来るんだよ」