轻松读懂日语经典作品
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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
「そんな話なら親方が断わる筈だぜ」と仙之丞が云った、「親方が承知したところをみると、そんなんじゃねえと思う」
「そうだとも」縫之助が大きく頷いた、「本人の出世のためですからって、親方がちゃんと云ったんだから」
「ゆかねえでくれよ、若ぼう」権之丞が吃りながら云った、「親方だっておめえを手放すのは辛いんだ、本当の娘のように可愛がってるんだからな、おれたちみんなが、みんな自分の本当の妹のように大事に思ってるんだから」
「あたし、ゆきゃあしないわ」
若尾は胸を張って云った。
「大丈夫、どこへもゆきゃあしないから、あたし岩本一座の美若太夫よ、その話が、もしか本当だとしたってゆくもんですか、誰がくそだわ」
そのとき入口の垂をあげて、親方の孫右衛門が入って来た。白髪の六十ばかりの老人で、固肥りの逞しい躯に布子と胴着を重ね、片手をふところへ入れたまま、そこに立って、静かな細い眼で、じっと若尾を見まもった。――他の四人は固唾をのみながら脇へどいた、親方は少し、しゃがれた低い声で云った。
「おいで、若尾、でかけるんだ」
四人は若尾を見た。若尾は黙って、箱の中の庄太夫のほうへ眼をやった。