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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

」

わあ! 何というゲスな駄じゃれ。全く、田島は気が狂いそう。

田島は妙な虚栄心から、女と一緒に歩く時には、彼の財布を前以て女に手渡し、もっぱら女に支払わせて、彼自身はまるで勘定などに無関心のような、おうようの態度を装うのである。しかし、いままで、どの女も、彼に無断で勝手な買い物などはしなかった。

けれども、おそれいりまめ女史は、平気でそれをやった。デパートには、いくらでも高価なものがある。堂々と、ためらわず、いわゆる高級品を選び出し、しかも、それは不思議なくらい優雅で、趣味のよい品物ばかりである。

「いい加減に、やめてくれねえかなあ。」

「ケチねえ。」

「これから、また何か、食うんだろう?」

「そうね、きょうは、我慢してあげるわ。」

「財布をかえしてくれ。これからは、五千円以上、使ってはならん。」

いまは、虚栄もクソもあったものでない。

「そんなには、使わないわ。」

「いや、使った。あとでぼくが残金を調べてみれば、わかる。一万円以上は、たしかに使った。こないだの料理だって安くなかったんだぜ。」

「そんなら、よしたら、どう? 私だって何も、すき好んで、あなたについて歩いているんじゃないわよ。