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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

多分身体全体を化粧しているのでしょう、青味がかった白さに、肉体の凹凸に応じて、紫色の隈を置いた、それ故に一層陰影の多く見える裸体が、背景の真赤な花の屏風の前に、次々と浮出して来るのです。

彼女等は、テラテラと膩ぎったたくましい足を、踊る様に動かし、黒髪を肩に波うたせ、真赤な脣を半月形に開いて、二人の前に近寄り、無言のまま、不思議な円陣を作るのでした。

「千代子、これが私達の乗物なのだ」

廣介は千代子の手を取って、数人の裸女によって作られた蓮台の上におし上げ、自分もそのあとから、千代子と並んで、肉の腰掛に座を占めました。

人肉の花びらは、開いたまま、その中央に廣介と千代子とを包んで、花の山々を巡り始めるのです。

千代子は、目の前の世界の不思議さと、裸女達の余りの無感動に幻惑して、いつしかこの世の羞恥を忘れて了った形でした。彼女は、膝の下に起伏する、肥え太った腹部の柔か味を、寧ろ快くさえ感じていました。

丘陵と丘陵との間の、谷間とも見るべき部分に、細い道は幾曲りしながら続きました。その裸女達の素足が踏みしだく所にも、丘と同じ様に百花が乱れ咲いているのです。