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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
いきなり警察沙汰なんかにしたくない理由があったものですから。という訳は、私はあなたの芸術には心から敬服しているのです。いくら東小路伯爵夫人のお頼みだからといって、この偉大な天才を、むざむざ浮世の法律なんかに裁かせたくないからです」
「すると、君は東小路からの廻し者なんだね」
廣介はやっと意味を悟ることが出来ました。源三郎の妹のとついでいる東小路伯爵というのは、数多の親族の中で、金銭の力で自由に出来ない、たった一人の例外だったのです。北見小五郎はその東小路夫人の手先の者に相違ありません。
「そうです。私は東小路夫人の御依頼によって来ているものです。日頃お国の方とは殆ど御交際のない東小路夫人が、遠くからあなたの行動を監視なすっていたとは、あなたにしても意外でしょうね」
「イヤ、妹が僕にとんでもない疑いをかけているのが意外だよ。逢って話して見ればすぐ分ることなんだが」
「そんなことをおっしゃった所で、今更ら何の甲斐があるものですか。『RAの話』は私があなたを疑い始めたほんのきっかけに過ぎないので、本当の証拠は外にあるのですから」
「では、それを聞こうではないか」