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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
人々は菰田氏の墓場から死骸が消えうせ、別の場所に菰田氏とそっくりの生きた人間が現れたのを見て、忽ち菰田氏が蘇生したものと信じ切ってしまいました。ですが、棺桶の中から死体がなくなったといって、必ずしもその死体が甦ったとは極められません。死体は外の場所へ運ばれているかも知れないからです。外の場所、それは最も手近な所に幾つも棺桶が埋めてあるのですから、死体を運び出した者がそれをどこかへ隠そうとするなら、そのお隣の棺桶ほど屈竟の場所はありません。何とうまい手品ではありませんか。菰田源三郎の墓の隣には源三郎の祖父に当る人の棺が埋めてあるのですが、そこには今、あなたの思遣りのあるはからいで、お爺さんと孫とが、骨と骨とで抱合って、仲よく眠っているのですよ」
北見小五郎がそこまで話し進んだ時、くずおれていた人見廣介は、突然がばとはね起きて、薄気味悪く笑い出すのでした。
「ハハハ……、イヤ、君はよくも調べ上げましたね。その通りです。寸分間違った所はありません。だが、実をいうと、君の様な名探偵を煩わすまでもなく、僕はもう破滅に瀕していたのですよ。遅いか早いかの違いがあるばかりです。