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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

上せ性は本当だった。昨今は大方禿げてしまって、アイロンをかけようものなら、火傷をする。

五名の卒業生の中、首席の立花君は優秀の成績だったので、折から欠員の出来た中学部の方へ教師として残ることに定った。私達、怠けもの連中は無論これに異存はない。立花君も満足のようだったが、そこは才子だ。

「たってと頼まれたので仕方がない。母校の為めに尽すのさ」

と弁解するように言った。

「月給は幾らだい?」

と私達はそれを問題にしていた。

「さあ」

「三十円もくれるのかい?」

「いや。何うして/\」

「二十五円かい?」

「もっと下だ」

「二十円?」

「十七円さ」

と立花君は体裁を飾る男だから、発表するのに甚だ吝かだった。

「田舎の中学校へ行けば四十円取れるんだが、母校の為めさ。仕方がない。それにこゝに踏み留っていれば、西洋人と接触するから、勉強になる」

と又弁解を加えた。

立花君が定ると、後は私と野崎君丈けの身の振り方だった。安部君は直ぐに神学校へ入る。高木君は旅費調達次第渡米することになっていた。

「おい、何うする?」

と野崎君は私に相談をかけた。

「さあ」

「もう卒業してしまったんだから、然ういつまでもこの寄宿舎にいられないぜ」