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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

それに来月分が手つかずに入ります」

「矢っ張り中学校の先生は違うのね」

「これからは毎月定めて送りましょう」

と私はその積りだった。そうして半年以上続けたと記憶する。しかしこれが私の孝養の全般だと思うと情けない。志はあったが、結婚後は手が廻り兼ねた。両親も察して、それには及ばないと言ってくれたのを幸い、その中俸給が上ってからと心掛けていたら、長男が生れた。以来一年置きに人口が繁殖した。俸給は然う規則正しく上らない。凡人は算当を誤った。割の好い転任を数回やったが、子供に追いつく俸給なしという真理を発見するばかりだった。

「子供にかゝるだろうから心配しなくても宜いよ」

と父親は素より当てにしていなかったが、当てにされたところで事実何うも仕様がなかった。現に私は十人の子持である。産児制限ということを初耳に聞いてからも四人生れている。

いや、話が一足飛びになったが、初めて任地から帰郷した折のことだった。私は間もなく上京した。田舎にいると時世に後れるから、年に一回、必ず東京の空気を吸う決心だった。但しこれも翌年実行した丈けでもう思うに委せなかったが、愚痴になるから控える。