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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「それじゃ仕方がありませんなあ。あゝ/\、子供が多いと親孝行が出来ない」

「別にしなくても宜いよ。これ丈けの子供を育て上げるのが大きな親孝行です」

「然う思って下さると、私も嬉しいです」

と私は有難く感謝した。

それから五年になる。早いものだ。長男は帝大へ通っている。長女は高女を卒業して家事の手伝いをしているが、下に中学生が二名、女学生が二名、小学生が二名、学校へ行かないのが二名という勘定になる。長いこと嶮しい坂を登って来たが、峠は寧ろこれからだ。親父たるものが稼がざるを得ない。最近仲人の柴田君が校長会議に上京して立寄った時、

「君は実際豪いよ」

と言って褒めてくれた。

「稼がなければ、これ丈けの人数が干乾になるから仕方がないんだ」

「それにしても感心だよ」

「何あに、自分じゃ平気だ。これが当り前だと思っている」

「一体何時間やっているんだね?」

「然うさね」

と私は直ぐに答えられない程やっている。

「昼間の学校が二軒で三十六時間。夜学校が一晩置きで九時間、両方で一週四十五時間さ」

「大変だね。僕の方の先生の三倍、いや、二倍半だ」

「それから日曜講習が午前午後で四時間」