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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「すると四十九時間じゃないか?」

「家庭教師が一晩置きで、これは六時間だろうね、精々」

「おや/\。未だあったのかい」

「悉皆で五十五時間さ。あゝ、未だある。余暇に著述をやっているよ」

「然う/\。この間は和文英訳の本を有難う。五十五時間もやって、能くあんな面倒なものを書く余暇があるんだね」

「夜十時頃に帰って来て、十二時まで書くのさ。教えるのとは別なんだから変化になる」

「精力絶倫だな」

「いや、仕方なしだよ。しかし宜くしたもので、子供の為めだと思うと、一向苦にならない」

「好い心掛だ」

と柴田君は益※(二の字点、1-2-22)感心した。

「僕はこの頃昼間の学校でゴールドスミスのヴィカーを教えているが、あの冒頭に千古の真理が書いてある」

「何んなことだい? 僕も読んだことがあるが、忘れてしまった」

「僕は暗誦している。I was ever of opinion that the honest man who married and brought up a large family ……」

「面倒だから翻訳をしてくれ給え」

「女房を貰って大勢の子供を育てる律義者は独身でいて人口論をやる奴よりも余計社会に貢献するというのさ」