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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「友一や」

と来た。

「何ですか?」

「お前、中学校じゃ一番になれないの?」

「はあ」

「せめて三番ぐらいにならないとお父さんの顔が立ちませんよ」

「大丈夫です」

「なれるの?」

「いゝえ、お父さんの顔なんか知っているものは一人もありませんから」

「それにしても、小学校が八年間模範生で中学校が十三番なんて、少し変じゃないの?」

「中学校には贔負ってことがありません。お父さんが校長をしている学校とは違います」

「それじゃ小学校は贔負で一番だったの?」

「然うです」

「そんなことはありますまい。小学校でも中学校でも自分の勉強一つですわ」

「大人がいるんですよ。直ぐ二年級へ入ったんですから、むずかしい学問ばかり習うんです。お母さんに中学校のことが分るものですか」

と私はもう女親を圧迫することを覚えた。

四年間の中学生活は小学校時代よりも遥かに楽しかった。成績は父親の注文通り十番台で通した。一度八番になったが、その次に二十五番へ落ちた。以来二十番台の牽引力が強くなって、大抵十八九番に重心を保った。これぐらいの出来栄えなら人から恨まれる心配はない。尤も級は常に一致和合して無事平穏だった。