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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
級友諸賢
というのが私の感謝だった。明治学園の生活は悉皆気に入った。年来思慕の学校だから、苦情のありよう筈はない。最高学府の帝国大学へ入っても、これ以上の満足は覚えなかったろうと思われる。感激の余り、差当り平素の自己以上になっていた。鈍っていた信仰が刺戟された。
「こゝだ。新入学と共に生れ更ろう」
と発心した。郷里の両親と占部牧師へ然う書いて送った。祈祷、勉強、自省、交際、運動等の時間割を細かに作って、忠実に実行した。
或朝、私が五階の塔へ登って、少時のお祈から目を見開いたら、安部君が直ぐ側に来て、矢張り祈っていた。私はその敬虔な態度に感心して、又祈り始めた。再び目を見開いたが、安部君は未だ頭を下げていた。私は又々祈り足して、又々見開いたが、安部君は一生懸命だった。敵わないと思った。しかし負けるのは口惜しいから、更に初めから祈り直して、アーメンと声を立てたら、安部君もアーメンと和して漸く終った。
「お早う」
「お早う」
と双方同時に挨拶をした。
「君は豪い」
と安部君は溜息をついた。
「何うして?」
「実に能く祈る」
「君こそ能く祈る」
「いや、僕は迚も敵わない」
「そんなことはないですよ。