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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

第四幕

第一場

唯円 私はたまらなくなります。人生はあまりにさびし過ぎます。

親鸞 人生にはまだまださびしい事があるのだ。人は捨て難いものをも次第に失うてゆくのだ。私もきょうまでいかに多くのものを失うて来た事だろう。(独語のごとくに)あゝ、滅びるものは滅びよ。くずれるものはくずれよ。そして運命にこぼたれぬ確かなものだけ残ってくれ。私はそれをひしとつかんで墓場に行きたいのだ。(黙祷する)

唯円 あゝ、私はおそろしくなりました。

――幕――

第四幕

第一場

黒谷墓地

無数の墓、石塔、地蔵尊等塁々として並んでいる。陰深き木立ちあり。ちょっとした草地、ところどころにばら、いちご等の灌木の叢。道は叢の陰から、草地を経て木立ちの中にはいっている。

人物 唯円 かえで 女の子、四人

時  春の午後 第三幕より一年後

唯円一人。木の株に腰を掛けている。

唯円 春が来た。草や木の芽はまるで燃えるようだ。大地は日光を吸うて、ふくれるように柔らかになった。小鳥は楽しそうに鳴いている。数々の花のめでたいこと! 若い命のよろこびが私のからだからわいて出るような気がする。(立ち上がり、あちこち歩く)もう来そうなものだがな。