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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

第六幕

親鸞 それが人間の恋なのだ。

唯円 (独白のごとく)あゝ、いったいどうすればいいのだ。

親鸞 (しずかに)南無阿弥陀仏だよ。(目をつむる)やはり祈るほかはないのだよ、おゝ仏さま、私があの女を傷つけませんように。あの女を愛するがゆえにとて、ほかの人々をそこないませんように。わたし自らを乱しませんように――

唯円 (手を合わせる)縁あらば二人を結びたまえ。

親鸞 おゝ。そのように祈ってくれ。そして心をつくしてその祈りを践み行なおうと心がけよ。できるだけ――あとは仏さまが助けてくださるだろう。

唯円 (沈黙、だんだん感動高まり、ついにすすり泣く)

親鸞 お慈悲深い仏様に何事もまかせたてまつれ。何もかも知っていらっしゃるのだよ。お前のこころのせつなさも。悲しさもな。(祈る)おゝ、仏さま、まどかなおわりを、あわれなものの恋のために!

――幕――

第六幕

場所 善法院御坊

時  第五幕より十五年後     秋

人物 親鸞            九十歳

善鸞(慈信房)       四十七歳

唯円            四十歳

勝信(かえで)       三十一歳

利根(唯円の娘)      九歳