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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

靱負は、暫く、刀剣を見廻していたが、用人が、小さい帳面を、膝へ置いたのを見て

「その永正祐定は、樺山」

用人は、頷いて、帳面へ印をつけ、刀に縛りつけた白紙へ、樺山と、書いた。

靱負は、遠島という処分になったのであるが、この処分は、習慣として、自裁をすすめる方法であった。あからさまに、切腹を命ずる程の罪もないが、死んだ方がいい、と思った人間に対しての処分法であった。それから又、遠島に処せられたとしても、一生、生きて戻れぬ上からは、武士の面目として、切腹するのが、当前でもあった。卑怯に、島流しにされながら、のめのめと、生きていることは、隼人の意地として、出来ないことであった。

「吉兵衛が、参りました」

襖外で、そういう声がした。

「通せ」

靱負が、答えると同時に、襖が開いて、西郷吉兵衛が、入って来た。そして、敷居際へ、平伏した。

「それは、吉井へ――」

靱負は、用人へ、そう云ってから

「近う、参れ」

「はっ」

「介錯をしてもらいたい」

吉兵衛は、じっと、靱負の顔を、眺めていた。用人が、手をとめたのを見ると

「国重は、三原へ」

「はい」

用人は、周章てて、筆を走らせた。