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みょうじのはなし

名字の話

柳田 国男

「斯民家庭 第二編第七号、第九号、第一〇号、第一一号」報徳会、1911(明治44)年7月1日、9月1日、10月1日、11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 页

青空文庫

権兵衛作や勘太作

露西亜の名を呼ぶ慣習

あれはもちろん南島における命名慣習を、小説の材料にしたもので、父が祖父の長男であれば太郎で、自分がその三男であれば太郎三郎と名乗り、自分の五男は三郎五郎と名づけるとか、三郎の姉娘は三郎長女と名づけるというような、簡単な名の付け方であったのであります。

権兵衛作や勘太作

八年ほど前に伊豆の大島へ行った時には、この島人が通例名のほかに、右のような旧慣によって人を呼ぶことを目撃したのであります。内地でも百姓の仲間では、同じ村の若い者に作造という者が二人あれば、これを区別する方法として父の名を頭に付けて、権兵衛作、勘太作というように呼ぶのもない例ではありませぬ。露西亜ではこれが紳士間の普通の作法になっております。

露西亜の名を呼ぶ慣習

英仏などで家名ばかりを単称するのを尊敬の意とするに反して、露国では親しいものの間には「イヴァン」とか「ピヨトル」とか名だけを呼ぶけれども、敬意を表する場合には別に「ムッシュ」も「ヘル」も付けずに、親の名を続けて呼ぶ。たとえば親の名が「ピヨトル」ならば、「イヴァンペトロヴィッチ」と呼び、女ならば「アンナペトロブナ」というように呼ぶのであります。