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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「そうです。僕には、この金仏の目が瞬く様に見えたのですが。あなた方も見ましたか」
「イイエ……ですが、その仏様は、ひょっとしたら、瞬きをするかも知れませんので」
斎藤氏は生真面目な様子で、冗談みたいなことをいい出した。
「どうしてですか。本当に、そんな馬鹿馬鹿しいことがあるのですか」
三谷が、驚いて口をはさんだ。
「以前から、そんないい伝えみたいな、迷信みたいなものがあるのです。なくなった主人は、夜おそくこの部屋にいると、よく、瞬きなさるのを見ることがあると申して居りました。私などは年寄りの癖に、どうもそんな迷信じみたことは信じられんのですが、主人は非常な信心家でして、あらたかな仏様だと、有難がって居りました」
「妙なことがあるものですね。で、それをご主人の外に見たものはなかったのですか」
明智が尋ねる。
「召使の者なども、たまさか、そんなことを訴えましたが、つまらぬことをいいふらしてはならぬと口止めをして居ります。化物屋敷の様な噂が立つのは好ましくはありませんからね」
「すると、僕の気のせいでもなかったのですね」
明智は、この異様な迷信に、ひどく興味をひかれたらしく、近々と仏像の側によって、熱心にその目を検べて見たが、別に発見する所もなかった。